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いつもの無表情のまま、淡々と彼女は正解を示した。
「私はロボット。マスターは人間。私は人間に恋愛的好意を持つことはありません。この恋愛でマスターは幸せにはなれません。故に無意味です。お引き取りください」
喋り終えた彼女の台詞を聞いて、僕は苦笑する。
確かにその答えはあまりに正しくて非の打ちどころがない。
わかっている。間違っているのはいつも人間のほうだ。
「君のプログラマーはやけにピュアな人だったみたいだね。マスターとして、ひとつ教えてあげよう」
非の打ちどころばかりの僕は立ち上がって無表情のニコに歩み寄る。
僕からの指示の無い彼女は微動だにしない。
「人は絶対に幸せになれないとわかっていても、恋をしてしまうことがあるんだ」
僕はそう言って、彼女の唇に自身の唇を重ねた。
温度のない柔らかい唇に数秒触れた後、僕は離れて彼女の顔を見る。
そこには今までに見たことのない表情があった。
「……笑ってるよ?」
彼女は口角を上げて微笑んでいた。
瞳が潤んで、頬も少し赤みを帯びている。
「はい。唇に触れると微笑むようにプログラムされています」
「君のプログラマーは本当にピュアだなあ」
そう言って僕はもう一度キスをして、二人で笑った。
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