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一日目、朝
――アスファルトが揺らぐ炎天下の夏の日に、僕はロボットを拾った。
いや拾ったというのは違うかもしれない。
盆休みの4連休初日の木曜日。朝からスーパーで食料を調達しての帰り道。
そのロボットは、僕の家の玄関前に腕組みをして仁王立ちしていた。
「なんだ……?」
不審に思いながら近づくと、とても精巧に造られた女性型ロボットだった。歳は20代前半くらいの設定だろう。
しかし何故ロボットが僕の家の前に立ち塞がっているのか。
「お待ちしておりました」
「いや誰?」
「ダース=ダイヤモンド社製ヒューマンロボット、分類番号F-0025。ニコとお呼びください」
「いやそうじゃなくて」
表情を変えないまま自己紹介をするロボットに僕はつい言ってしまったが、ロボット相手には何の意味もない行為だ。
そしてこうしている間にも頭上から燦々と焼くような太陽が降り注いでいる。このままここにいれば、人間の僕は倒れてしまう。
「話は後にしよう。とりあえず僕を中に……熱つっ!」
ロボットを玄関の前から動かそうと肩を持つと、その肩は異常な熱を持っていた。
「皮膚素材の下は金属パーツですので熱を持っています。私に触れると火傷しますよ、マスター」
「アラートが遅いよ。あとマスターってなに」
「マスターとは私の管理者という意味です。これから私はマスターの命令に従い、日常生活のサポートをさせて頂きます」
「いつの間にそんな設定に」
「初期設定段階で私に触れた者をマスターとするようプログラムされています。そしてアラートはマスターを対象に設定されています」
「嵌められた」
まさか自らこんな押し売り方をするロボットに出会うとは。
いや、待て。それよりも気になることがある。
「そんなに熱を持って、君としては大丈夫なの?」
「想定以上の温度上昇に冷却ファンが壊れてしまったようです。早急に冷却しなければオーバーヒートを起こし…あ、がが、限か」
「早く家に入れ!」
僕がそう言って玄関のカギを開けると、ロボットは「かし、こ…ます。たー」と音声をひび割れさせながら扉を開けて中に入った。
こうして僕はロボットを拾った。いや、拾わされたのだった。
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