一日目、昼

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一日目、昼

「なあロボットくん」 「…………」  クーラーの送風口の前に仁王立ちするロボットに僕は呼びかけた。  冷却といっても水をかけるわけにもいかず、体中に保冷剤を巻き付けたロボットを見る。  皮膚の質感や髪の艶感、瞳の色など、本物の人間と遜色がない。  それでも僕がロボットだと分かった理由は、濃青色ワンピースの袖口から覗く白い腕に見慣れたロゴマークが描かれていたからだ。  ――小さなダイヤが12個連なったチェーンマーク。    世界で初めて人に限りなく近い外見と音声、キャラ設定を搭載したヒューマンロボットを開発し、世界中に『人とロボットの自然な共同生活』を提案したダース=ダイヤモンド社のロゴだ。  通称D.D.社と呼ばれている。    D.D.社の発明のおかげで、人の隣にロボットがいる日常は増え、様々な場面でロボットたちは人間をサポートしてくれていた。  とはいえロボットは高価だ。社会人5年目を迎えたばかりの僕が買えるような代物じゃない。  そのロボットがどうして僕の家の前にいたのか。 「おーいロボットさん」 「…………」    ロボットは反応を示さない。そよそよとクーラーの風に髪が靡いている。   「……ニコ」 「なんでしょうマスター」 「面倒くさいやつだ」  素知らぬ顔で振り向くニコ。その拍子に身体から柔らかくなった保冷剤がいくつか落ちた。
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