月曜日 06:30

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月曜日 06:30

「ピピッ」 電子音が僕の耳元で鳴る。ちらちらと瞼の裏で動く陽光にゆるりと瞼を開く。 「おはようございます」 身体にセットされた僕だけのマイクロチップAIが脳裏に直接話しかけてくる。 「本日は晴れ時々曇、気温30℃、降水確率20%、夕焼けが綺麗に見えるでしょう」 そう言って、僕のパルスを表示させる。 パルス――それは、僕らの全て。生年月日などの個人情報からその日の体調、感情、進路、就職できる職業、そうして、運命の相手まで。その形や拍動の速さ、色までもが僕らの全てを洗い浚い見える様にしている。 いつも通りに顔を洗って、制服に着替えて外に出た。じりじりとした日差しが照り付けて思わず顔を顰める。 その視線の先には、634mのタワー。今日も堂々とそのシルバーの巨体に青空を反射してる。その名を「スカイツリー」という。もうずっと昔に建てられた電波塔が、東京に住む僕らのAIの全てを司る中枢だった。
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