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「皆さんは、自分は何の為に生きているのだと思いますか?」
周りの生徒たちが一斉にカラフルなパルスを放ち、俺は、とか、私は、とか言っている。なんて色鮮やかなんだろうと思って、ふと自分のパルスを見下ろした。
灰色――興味なし。
そりゃあそうだよなぁ、と思いながら溜息を吐いた。もしあの質問に僕が答えるとしたら、多分、念の為だと答えるだろう。誰も死なないから死なないだけ。
だってパルスが有れば、少し気分が落ち込んだり、逆に興奮状態にあると、すぐに適切な処置が受けられるんだ。
だから、自殺とか犯罪はゼロ。自分の人生を途中で捨てる人もゼロ。
死んでも幸福感を得られるか分からないなら生きてたほうがマシだから生きてるだけ。
皆が口々に言ってることも、AIが指示して、パルスが示した職業名でしかないのだ。溜息すら出ない。
「はい、それでは今日の歴史はこちら」
そう言って先生はパネルをつつく。するとそこには、「信愛」という文字が現れた。
「信愛するという事を考えていきたいと思います」
刹那。
彼女の胸から流れていた緑色のパルスが、その笑顔と共に跳ねて、そうして、
――……消えた。
しん、と沈黙が満ちる。先生は、気が付いていないのか、話を続けようとして、パネルから僕らの方を見て、そして目を見開いて――――、
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