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朝食を終え、由良さんが洗濯をしてくれているうちに食器を片付ける。 少し焦げたホットケーキは俺が食べると言ったのに、“香ばしい方が好みだ”、という謎の理由で言いくるめられて結局由良さんに渡ってしまった。 1ヶ月も仕事で出張に行ったあと俺が4日間も迷惑をかけていたのだから、少しは怒ったり、怒らないにしても疲れを見せたりしてくれてもいいと思う。 なのに今日も相変わらず彼は格好いいだけで、むしろ心配… …と、そこまで考えて大変な事実に気がついた。 昨日と一昨日は平日なのに、由良さんはずっと俺のそばにいてくれたのだ。すなわちそれは仕事に行っていないことを示す。 そしてもう一つ。 朝コンビニですら行くことができなかったのに、平日ならば俺も学校に行かなくてはならない。 洗い物を終え、もう一度玄関のドアに手をかける。 しかし結果は先ほどと同じだった。 ドアを開けようと思うと、その瞬間に手が震えて動かなくなってしまう。 「…なんでっ…!」 両手で押さえながら無理に開けようとしても、手の震えがひどくなるだけでなかなかドアを開けることができない。 …なんでこんなことができないんだ…。 次第に思い通りに動かない自分の身体に苛立ちを覚え始め、呼吸が乱れてきた。 「まだ無理をしてはいけないよ。」 ふと、耳元でよく知った甘い声がささやき、節ばった大きな手が震える俺の手を優しく包み込んだ。 …由良さんの声…。 そのまま頭を撫でられ、身体を彼の方へ向けられる。 「まだもう少しここにいて。僕がここにいて欲しいんだ。命令、聞いてくれる?」 じっと目を見てglareを放ちながら由良さんが紡いだ。 紫紺の瞳は柔らかに細められていて、まるで俺を愛おしいと言っているみたいで。 __由良さんの命令なら、聞きたい…。 無言で頷くと、いい子、と軽く口付けられる。 その優しさが俺の胸を満たして、自分への嫌悪感を追いだしてくれたような気がした。
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