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プラネタリウムのあとに向かった先は、行こうと言っていたブックカフェ。 広い店内には、読書に静かに集中するための一人がけの席や、談笑しながら楽しむゆったりとしたソファー席、自然が見えるテラス席など様々な席がある。 俺と由良さんはソファー席を選択して、それぞれ気になった本を手に取った。 このカフェの店内の本は全てタイトルが隠されていて、カバーにはその本の推薦文が印刷されている。 表紙やタイトルなどの先入観なしで手に取った本を楽しんでもらう、という目的らしい。 「面白いね。幹斗君のそれは…推薦文から見ると青春物っぽいね。幹斗君、何にする?」 「由良さんのは恋愛小説っぽいです。…俺はこのパスタにします。」 「飲み物は紅茶でいいかな?僕はこのサンドイッチにするね。」 メニューを決めながらお互いの選んだ本のカバーを見合わせる。 由良さんのカバーには”空想好きの幼い少女の成長の物語”、”笑いあり涙ありの愛の物語”、などと書いてある。これが由良さんの選択した本だと思うとちょっと意外だ。 「由良さんはどうしてその本を選んだんですか?」 「ああ、目を瞑って掴んだ本がこれだったんだ。たまにはそういうのもいいと思って。幹斗君は?」 …なるほど。 「内容を見て面白そうなのを…でも、そうやって出会うのも楽しそうですね。」 「せっかくだから新しい作品に出会ってみたいと思って。」 由良さんの言葉を聴いて、大人だなあと思う。 そしてそういう大人の余裕が見えるところもたまらなく好きだ。 「ご注文お伺いいたします。」 「ベーグルサンドのセットとミートソースパスタのセットをお願いします。」 「かしこまりました。お飲み物は… 」 由良さんが手を挙げて店員さんを呼び出して注文をお願いしてくれる。 そして店員さんが頭を下げていなくなると、俺と由良さんは黙って本を開いた。
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