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「そういえば研究の方はどう?東弥はデータ解析のプログラミングだっけ?」
教室に着き、このままいくと夜の頻度やプレイ内容の話になりそうなので、ひとまず話を逸らしてみる。
「うん。データのフィッティングとかがメインかな。ずっとパソコンに向かってるけど、結構複雑で。
…あと後輩が全然来なくて困ってる…。あ、いただきます。」
きちんと手を合わせ、東弥が食べ始めたのはコンビニのおにぎり。
教室じゃなくて学食に行ったほうがよかったかな、とその簡素な食事を見ておもう。今後悔しても意味がないけれど。
「いただきます。…そっか、後輩…。」
そしてそういえば、東弥の話を聞いて、嫌なことを思い出した。
「何かあった?俺で良ければ話は聞くよ。」
「それが… 」
研究室にはいくつかのプロジェクトがあって、大抵一つのプロジェクトに一学年一人が配属される。つまり院一年生の俺には一人4年生の後輩がついたわけなのだが、彼はSubを見下すタイプのDomで、俺の話を嫌そうに聞く。
それを話すと東弥はあからさまに顔をしかめた。
「…まだそんな考えの人がいるんだ。Subとプレイしないと暴力性が抑えきれなくなるし身体に不調はきたすし、お互いに助け合う関係なのにね。
もし本当にヤバそうだったら相談して。俺が牽制しとくから。」
「ありがと。本当に大変になったら、頼らせてね。」
「うん。一人で抱え込むのはだめだよ。」
「…うん…。」
世の中にはいろいろな考え方の人がいる。
SubをDomの犬だと言って見下すDom、Domを必要以上に恐れるSub。
今はそんな差別的な考え方はほとんどなくなっているが、稀にいるのだ。昔はもっと酷かったらしい。
流石に由良さんに大学内でのことについて助けを求めることはできないから、東弥に協力すると言ってもらえて心強く感じる。
「あっ、そろそろ始まる。」
「いけない。急がなきゃ。」
話し込んでしまい、お互い食事の大半を残した状態で予鈴が鳴った。
授業前に寝ないようにM◯Xコーヒーを一気飲みして、“そんなに甘いの一気飲みして大丈夫?”と東弥に苦笑いされるのは、学部時代からのお決まりの光景である。
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