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「おはよう。」 優しい声が降ってきて、まぶたを擦りながら細く目を開けた。 今日は土曜日。 昨夜も存分に愛された身体は心地よい怠さに包まれている。 まだもう少しこうして由良さんの腕の中にいたいから、俺は彼の身体に手を回し、力を込めた。 「ん?もう少し寝る?」 綿菓子みたいな甘い由良さんの声に、いけないと思いつつも甘えてしまう。 「うん…。」 「僕ももう少し寝ようかな。」 柔らかく俺の身体を抱きしめてくれた彼の胸板からは、とくとくと優しい心臓の音。 1日が24時間で朝も夜も平等に流れていくだなんて嘘だと思う。 休日は平日よりもずっと時間の流れが早い。 それをわかっているのにこうやって自堕落な眠りを貪ってしまうのだから、不思議だ。 ___ 「わっ、もう10時半!?」 たくさん寝ようと9時半に設定したのにさらに1時間も寝てしまった。 「そんなに慌てないで。予定は午後からでしょう?」 ベッドの上で額を押さえている俺の手を由良さんが優しく除けて、ふわりと甘い口づけを落とす。 不意打ちで驚いて目を開けてしまったから、彼の端正な顔立ちが間近に見えて心臓がうるさく鳴り出した。 愛おしげに細められた切れ長の紫紺の瞳、押し当てられた薄く形の良い唇、綺麗に通った鼻立ち。全てがジグソーパズルのピースのようにぴったりと当てはめられていて、どんな目覚し時計よりも効果的だと思う。 「あっ、朝ごはん、作ってきます!!」 多分真っ赤になっているであろう自分の顔が恥ずかしくて逃げるようにベッドを抜け出したが、手首を引かれいとも簡単にベッドに連れ戻されてしまった。 そのまま手首を縫い止められ、優しく頭を撫でられる。 「昨夜頑張ってくれたから、朝は僕が作る約束でしょう?」 「!!」 彼はglareを放って俺が目を逸らせないようにして、優しく、でも少し意地悪く笑んだ。 …格好いいけど、ここまで来ると心臓に対する拷問だ…一生分の回数の呼吸を今ここでして死んでしまう…。 「おっ、俺も手伝います!料理は俺のが得意だから!! …と、すみません、違います…。ちょっと、びっくり、しちゃって… 」 今すぐ貝になりたい。由良さんが格好よすぎて動揺しすぎてつい変なことを口走ってしまった。 けれど由良さんは全部わかってるよ、と言いたげに柔らかく口元を綻ばせ、 「じゃあ今日の他の家事は全部僕がやるから、朝食は幹斗君に手伝いをお願いしようかな。」 って言って、俺は反射的に頷いてしまって、まんまとはめられたと気がついたのは数分後のお話。
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