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東弥君のおかげで少し冷静になることができた僕は、そのまま仙波に対するglareを解き、本題を持ち出すために彼を席に座り直させる。
「僕からの要求は2つ。まず、レコーダーの前で御坂と君がやったことを全て吐いて欲しい。そしてもう一つは、幹斗君が卒業するまでの2年間この大学から消えて欲しい。休学して留学すれば君自身の強みにもなる。どうかな。」
こちらとしてはかなり譲歩した提案なのだが、仙波は何も言わない。沈黙が答えだと言うことだろうか。
「僕の提案に乗らなくてもいいけれど、御坂は君が思っているより残酷な奴だよ。例えばこのメッセージを元に僕が御坂と君を訴えようとしたところで、御坂は君に全てをなすりつけるだろうね。
幹斗君が悲しむから、僕は君を起訴しようとは思わない。でも今ここでこの条件を飲まないなら容赦なく起訴するし示談には一切応じない。
10秒以内に決めて。10、9、… 」
「……言います。」
枯れた喉からひりだしたような掠れた声で彼はそう告げて、そのまま御坂との出会いから計画実行に至るまで全てを詳しく話した。
御坂に出会ったのはとある定食屋。
仙波が偶然行った先で幹斗君と遭遇し、苛立って睨んでいたところに声をかけられたと言う。
仙波はその頃から幹斗君のことをつけ始めていたらしい。
LINEのメッセージとも整合性が取れており、何より内容に矛盾がないことから嘘である可能性は低いように感じられた。
2年間の休学を約束し、念のため御坂とのLINEのバックアップも取り、犯行現場となったホテルの名前を聞き出してから彼を解放する。
「いっそ清々しいほどの嫌なやつでしたね。殴らなくてよかったんですか?」
苛立った口調で東弥君がため息をついた。
僕は笑ってごまかして、ひとまずカフェの外に出る。
彼を殴ったところで何も解決しない。
昨夜幹斗君は仙波の名前を口に出さなかった。だから僕も、彼を必要以上に傷つけることはやめようと我慢した。
「…御坂には一発くらい入れておこうかな。」
「それがいいですよ。…じゃあ、俺はここで。
あと、これからホテルの監視カメラの記録を取りに行くんですよね?俺の母親が多分その辺顔が効くんで、もし無理そうだったらまた連絡ください。」
「うん、助かるよ。ありがとう。」
手を振って東弥君と別れたあと、今度は咲に連絡を取った。
咲は夜に女性口調でバーのオーナーをやったりもしているが、昼間は少し闇の深い業界で弁護士をしており、かなり顔が広い。
“…なあに、それ。
安心して。そのホテルなら話がつけられると思うわ。その御坂ってひと、二度とこの周辺でお外を歩けないようにしてあげましょう?”
事情を説明したあと電話口から聞こえた声から判断するに、咲もかなり憤っているようだった。
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