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“…ケイロンは医学、音楽、狩猟などの様々な技術にたけていて… ” 普通の公演にしておけば良かったかな、と心の中で後悔したのは始まってわりとすぐのこと。 プラネタリウムは、中学生以上という年齢制限付きの公演を選んだ。 星空の下、静かな音楽とアロマの香りが漂う室内でリラックスすることをコンセプトとしていて、内容は12星座の神話の読み聞かせなのだが、正直全く内容が頭に入ってこない。 ちなみにナレーションも耳に心地よい眠気を誘う声で、楽しいはずなのに高校の授業の何倍も眠い。 …由良さん、よくあんなに涼しい顔で起きてられるな…。 うっかりしたらすぐにでも船を漕いでしまう俺とは違い、由良さんはじっと公演を聞きながら時折星空に映し出される説明を眺めている。 寝落ちそうになるたびに由良さんを見て目を覚ましていたら、突然後ろから頭を優しく抱え込まれた。けれど視線の先は天井の星を向いたままで。 …えっ…? 戸惑う俺を、由良さんの大きな手は彼の方に優しく引き寄せる。 気付いたら、俺は頭を彼の肩にもたれかけるような体勢になっていた。 “寝てていいよ” 低く甘い声が耳朶を撫でるようにささやく。 …今一番この部屋に入ってから頭が冴えてます…。 真っ暗な室内で、微かに由良さんのつけている香水が鼻をくすぐって、由良さんの右手がすっぽりと俺の頭を覆っていて、ナレーションよりも自分の心臓の音の方が煩く感じた。 …せめてナレーションに集中しよう…。 星に目を向けることもできなくてただただナレーションに意識を向けていたから、結局公演をめちゃくちゃ聞くことができたのである。
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