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『何故、此処でメシを食う?』
忘れもしない、この教室で
初めてゴハンを食べてる私を見た
開口一番のセリフがこれだった。
お弁当持参で化学室の一角を陣取ってると
自分のテリトリーに入るなとばかりに睨まれた。
「一人より二人の方が美味しいって」
「お前がな」
その後も、邪魔だと追い払うような事
何度も言われたけど
段々、無駄だと諦めたみたいで
そのうち何も言わなくなった。
最近では努力の甲斐あってか
ごく稀にこうやって向かい合って
食べてくれるまでなった。
いつものようにお弁当を口に運びながら
先生を暫し観察。
先生ってほぼ毎日パン食べてる。
昨日はコロッケパンで今日はクリームパン。
自炊してないのかな?
うーん、確かに
先生がご飯作ってる姿とか想像できないけど。
というか……それ以前に誰か作ってくれそうなのに
やっぱ本命の彼女いないってことかな。
それとも単に、
「パン、好きなの?」
「別に」
「じゃ、モテるんだから誰かにお弁当くらい
作ってもらえば良いのに」
ソレは――――何気なく口にした言葉だった。
「他人が作ったものとか食わねぇよ」
先生が吐き捨てた台詞にハッとする。
私は震えだした手の所為で
持っていた箸を落としそうになった。
今……
地雷……踏んだ。
バカだ、私。
子供に死んで欲しいと願っていた先生の母親。
そんな人がまともな食事を出すだろうか。
親が出すモノを空腹と疑念とで葛藤しながら
口にする幼い子供の姿が脳裏をかすめる。
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もう少し先のエピソードにてイラストをスター特典に追加します。
挿絵的イラで2枚…
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