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見掛ける度、 やっぱり相変わらず笑っている。 相手が男も女も関係なく。 試験が終わり用紙を回収している間 この時間の試験官役の三塚先生が クラスメート達に囲まれている姿を 無意識にぼんやり眺めていた。 怒ったり怒鳴ったりしたところなんて ホント見たことが無い。 言葉使いも私達生徒にすら丁寧。 甞められない程度にきっちりと 押さえることこはちゃんと注意する。 その上、あの容姿だから人気があるんだろうけど ……色んな意味で他の先生違い過ぎて比較しようがない。 「お~い!月島、三塚先生見掛けなかったか? お前5限目科学だったろ?」 放課後職員室を通りかかった時、 担任から声をかけられた。 「いえ、見てません」 そか。と一瞬考える素振りを見せた後、 悪いがと付け加えられた。 なんで……あたしが…… と、思いつつも校長に呼ばれてるから 頼むよと言われては断るに断れず、 気軽に頼まれた実験道具もどきを両手に携えて その足を届け先の方に向けた。 職員室の机に置いとくには大きすぎてなという割に 箱の大きさほどは全然重くない。 だからたまたま通りかかった女の私でも良いかと 思って渡されたんだろうけど。 一旦、道具を下に置き古びた扉を開けると 雨で少しカビ臭い様々な機械と得体の知れない 標本の中を潜り抜け目的の机に漸くそれを置く。 「って、いないし。 ま、ここに置いとけば良いっか」 ふぅとため息を付いたとこで 教室側の扉が鈍い音とともに開くのが聞こえた。 「あ!三塚先……」 そう呼ぼうと思ったのに、 「今日はダメなんですかぁ?」 ……その声が聞こえるまでは。
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