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私は慌てて近くにあった遮光カーテンとボードの 隙間に隠れてしまった。 あ!しまった! これじゃまるで、この前の再現みたじゃない。 後悔したところでもう遅い。 今回だって隠れる理由なんて微塵もない。 頼まれごとをして届けただけ。 前回に比べて明確な理由があるし、 堂々と置いときましたよ~じゃ!と言えば良いだけ。 そんなことも咄嗟に判断できない自分の性格が情けない。 「………………」 この前あんな所を見ていなければ 多分それは言えたかもしれない。 やだな、なんか盗み聞きしてるみたいで。 「違いますよ、神谷先生」 若しくは三塚が話している相手が別の人なら、きっと。 「これからずっと、と言ったつもりつもりでしたが 上手く伝わりませんでしたか?」 一応、耳を塞いでなるべく聞かないように しようとしたけど存外、近すぎてその努力は 無駄になってしまっている。 「それってどういうこと?」 「国語科なのに……案外、理解力ないんですね」 それは全く抑揚の無い声だった。 ここから見える三塚の笑っている表情とは 見事に反比例した低いトーンの声。 (今の声ダレ?) 「飽きた。それだけです」 「え?」 それは神谷も同じだったらしく 絶句したまま言い返せないで呆然と立ちすくんでいる。 (三塚……センセイ?)
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