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恐らくは先生の過去であろう話を聞いて 再び化学室に行くか否か迷いに迷った。 先生がどういう意図であんな話をしたか 分からないから。 “気を許したから話した” それだけは絶対違うと分かるから。 ……分かっているからこそ。 知りたいと思った。 その理由を。 ”誰も好きになったことが無い” 似ているようでまるでかけ離れた 感覚を持つ先生に強烈な興味が贖えない。 そして、もう一つ。 寧ろこれが最大の理由かもしれない。 ……先生が過去に他人に助けを求めた時、 見て見ぬをフリをして逃げた人間になりたくなかった。 助けを求めることが無駄なんて 思って欲しくなかった。 だからといって私に何が出来るわけでもない。 それでも……何もせずにはいられなくて。 きっとこの答えは 先生の傍にいないと永遠に出ないから。 「よし!!!がんばろう!!」 私なりの揺るぎない決意と 煮え滾るほどの謎の使命感を携え 勇気を振り絞って訪れた化学室。 なのに…… それをバキリとへし折ってきたのは 他ならぬ当の三塚先生その人だった。
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