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静かな空間で先生のページをめくる指先を目で追う。
前から気になっていた。
先生は授業の他で特別用のある時以外は
何かしらの本を読んでいる。
それは大抵洋書らしき本であったり私からしたら
数字の羅列にしか見えない本だったりするけど、
共通するのは必ず片手で持つには絶対ムリそうな
ページ数の半端ないモノだった。
それを時々考え込むように見入っている。
「……いつも何を読んでるんですか?」
先生は顔を上げて一瞬目線を泳がした後、
私に辿り着いた。
「え?」
今、絶対私の存在忘れてた……
ええ、慣れてますけどね。
「いつも難しそうな本を読んでますよね。
今は何を読んでるんですか?」
「あ?何って……」
そう言いながら本を閉じて背表紙を
確認している動作をする先生。
「分からないモノ読んでるの?」
「分からないから読んでるんだ」
……話が噛み合わない。
先生はタイトルらしき言葉を口にすると
再び本を広げ視線を戻した。
「もっと楽しそうなの読めばいいのに」
「楽しいの基準が分かんねーよ」
本から視線を上げることなく
返答だけが返ってくる。
「例えば……」
普段から読書をする習慣がない私としては
コレっていうのが思いつかなくって
情けなく言葉を飲んだ。
「すんなり理解できるものなんか読んでも意味がない」
「え?」
「難解であればあるほど没頭できるだろ
余計なことを何も考えなくていい」
先生が独り言のように言う。
「それに……枕にもなるしな」
「…………」
あ……それ、ベタですよ?先生。
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