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「三塚先生」 神谷の艶のある声色で現実に引き戻された。 ちょ……こんなトコでマジ!? 二人そういう関係?? ……知らなかった。 何か微妙な間に見えないだけに 色々な妄想が脳内を飛び交うんですけど。 もう思考がグルグル回ってパニック寸前。 「流石に此処ではマズいですよ、 生徒が何時来るか分りませんからね」 今、良いこと言った、と三塚を讃える一方で、 潜められた声で答える三塚の台詞に 自分の今置かれている状況を 思い出して内心ドキリとした。 「じゃ、車のとこで待ってますね」 「用事(・・)片付けたら行きます」 神谷のローヒールの音がやがて聞こえなくなり 後は三塚が行ってくれれば漸くここから脱出できる。 「さてと……」 三塚の声が聞こえると、その場を動く音がした。 早く早く、早く出て行って! 「何やってるんですか?そこで」 必死の祈りも空しく 教壇の狭い空間に隠れていたのを 真上から覗き込まれて 呆れたような口調でそう言われた。 ……発見されてるし。 「気付いてたんですか?」 「はい、最初から」 これでもかという位の満面の笑みでサラリと 次の言葉を付け加えて、   「スカートの端、見えてましたしね」 「……」 じっと見られ、やがて思い出したように、 「月島さん、ですよね?」 それが先生との授業以外で話した初めての会話だった。
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