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「昨日、裄埜くんに助けて貰ったんだって?」
教室に入るなり1年の時からずっと
同じクラスメイトの玲ちゃんが開口一番そう言って
詰め寄ってきた。
「え?ユキくん??誰?」
「裄埜くんだよ!3組の裄埜 光。
いいな~羨ましいっ!」
もしかして昨日の化学室の一件のこと?
あの人、裄埜君っていうんだ?
いま初めて知った。
「……ね、まさかと思うけど
雨音、裄埜君のこと知らないとか言わないよね」
「あん……まり」
「はぁ??~~嘘でしょう?
あんな超イケメン!今まで目に入らなかったの?
マジ眼科行きなよ、もう!」
「そ……だね、ハハ、今度行ってみようかな……」
その後も懇々と裄埜君が顔だけじゃなくて
頭も良く、どれだけ凄い人気だと思ってるのかと
半ば説教混じりで絶賛ご教授頂いているわけだけど。
にしてもいつ終わるんだろう……コレ。
「授業がそろそろ始まるんじゃないかな?
席についた方が――」
「裄埜君はね、ファンクラブもあるのよ!
いい?それだけ人気あるし……」
興奮冷めやらぬ玲ちゃんは尚もまだまだ、
良いな~私も理系に変更すれば良かったと
捲し立てていて、その熱量に若干引いている自分がいる。
「ね……ねね。
玲ちゃんってその裄埜君?が好きなんだっけ?
なんか別の人じゃなかった?」
私の言葉にまるで外人みたいな大げさな仕草で
両手を横に振ってみせながら、
「わかってないね~雨音は。
本命は別。裄埜君は観賞用。実際話したことも無いよ。
現実的にムリだから夢はみない事にしてるの」
「玲ちゃん、一応言っとくけど
私だってたまたま隣でボーっとしていたから
見かねて教えて貰っただけ。
何かあるわけじゃないよ?」
「まぁ確かに彼、誰にでも優しいしね。
超カッコイイけどアレは彼女になったら大変だよ~きっと」
私の言葉に妙に納得したようで、うんうん分かる分かると
首を今度は縦に振っている時、先生が来て
やっと自分の席へ大人しく戻っていった。
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