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授業中、玲ちゃんの後ろ姿をぼんやり見つめて深い溜息をつく。 羨ましいと素直に思う。 私はまだあんな風に誰かを思えたことがない。 好きって感覚が分からない。 恋をすると例え両想いでなくても 見掛けるとテンションが上がるし、 偶然近くいるだけでドキドキするんだって。 話すとその日一日幸せな気分になれるって言ってた。 周りの子が好きな人の話をしている中、 皆の嬉しそうな顔を見るのは楽しくても その話題自体にはついていけなかった。 「雨音ってさ、恋愛したいっていうわりに 人に対してあまり関心ないよね」 いつか誰かに言われた言葉。 それがどれだけ重たい一言だったか 言った相手は考えも及ばないだろう。 友達から理想が高すぎるんだよと言われたけど 多分そんなんじゃない。 人を好きになりたくって 誰かをそう思い込もうと足掻いてるうちに その焦燥感に溺れていく自分がいる。 皆が憧れるという“裄埜君” 確かに爽やかでカッコ良かったと思う。 だからといってそんな彼を見ても ドキドキすることもなくただお礼を言っただけ。 はぁぁ……ホント可愛くないよね、私。 思春期真っ只中の女の子として どうなんだろうと真剣に悩む。 「はぁぁぁ」 (“誰にでも優しい”か……) その言葉は、私の中で別の人物を思い出させていた。 優しいって何だろう? 言葉?雰囲気? それとも単にそう思えるだけ? 分からない。
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