VS.シャグラン&ティブロン①

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 メルが後方を振り返ると、砂浜で遊んでいた子どもたちに向かって、何かが迫っていた。  あれは――さっきの姉弟だ!  話に気を取られていて、人がいることに気付かなかった……。  メルは慌てて子どもたちのほうへ駆け出した。  頼む、頼むから、間に合って――。  アウラとストラール、そしてバズがあとに続く。 「親父さん、舟を出してくれ! フロールたちはそれに乗るんだ、頼んだぞ!」  バズが走りながら指示を出す。 「分かったわ」 「今行くフム」  フロールは、不安そうに無言で走っているヴィオに声を掛ける。 「大丈夫よ、ヴィオ。私が付いているから」  ここからでもすでに、背びれがはっきりと見える。  間違いなくあいつだ。そして、間違いなく大きい――。  メルは、走りながら矢を放つ準備をする。  当たらなくてもいい。ひるませるだけで、いいんだ。  砂浜で立ちすくむ子どもたちに、サメが迫る。三メートルはあるだろうか――。  浅瀬などまったく気にする様子もなく、凶暴な狩人が全身をあらわにした。  信じられないことに、陸に上がってもそのスピードが衰えることはなかった。 「嘘……サメって陸でも自由に動けるの?」  フロールが自分の頬をつねりながら、目の前の光景が夢ではないことを確かめていた。   「粉々に砕いてやるゥ」  サメは、大きく口を開けて男の子に食らい付こうとする。 (ひーローのトうジょウだゼいッ)  だが、サメはメルの放った矢に気付き、直前でその体を反転させた。 「チッ」  尾びれで矢を弾き飛ばし、子どもたちは水しぶきと共に後方へ吹き飛ばされる。  バズが辛うじて男の子を受け止め、アウラは身を挺して姉を衝撃から守った。  ストラールが急降下してその鋭い爪で襲いかかろうとする。  メルも次の矢を準備する。 (エ~っ……サかナくサくナっチゃウ~)  しかし、そのどちらもサメに届くことはなかった。 「危ないっ!」  バズの声で、ストラールもメルも攻撃を止める。  うなりを上げて飛んで来た二つのブーメランを、二人は間一髪でかわした。
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