現実その2(透羽目線)

1/1
前へ
/59ページ
次へ

現実その2(透羽目線)

あれから3ヶ月。海羽につけた俺の印はもうないだろう。 海羽を想う日々が続く。 いつものようにBARで飯を食っていたら電話が鳴った。 「もしもし。颯真か。なんだ」 『来週の土曜日の夜、時間あるか?」 「なんで?」 『取引先がいろいろ集まるパーティーがあって。副社長の透羽にも 出て欲しいんだ』 「嫌だよ。お前がいればいいだろう」 『そういわず、頼むよ。これは社長命令だ』 「・・・。わかった。」 『ドレスコードはないが、それなりに頼むよ。 じゃあ。詳細はまた連絡する』 ああ面倒くさい。副社長っていったって特段何もしていない。 颯真の相談に乗ってやってるくらいだろ。 まあ。家で腐ってるよりかはいいか。 「幸太郎。また明日。」 「はい。透羽さん。お気をつけて」 BARをあとにする。 家に戻ってクローゼットを開ける。 何を着ていくか考えたがいまいちしっくりこない 「久々にスーツ新調するか。1週間もあればなんとかできるだろう」 次の日にさっそく、スーツをオーダーしに出掛けた。 その帰りにふと、ジュエリーショップのウィンドーにある ピアスとネックレスが目に留まった。 俺はなぜか店に入る。 「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」 「あの外に飾ってある、ピアスとネックレスを見せてくれ」 「はい。お待ちください」 店員はそういうと、ウィンドーから持ってきて見せてくれた。 「こちらは1点ものなんですよ。ステキですよね」 海羽に似合いそうだ。 「これをいただこう」 「かしこまりました。ただいま準備しますね」 店員はそういうと、BOXに入れてきれいなリボンを結んだ。 「ありがとうございました」 俺は店を後にして、いつものBARへ 「透羽さん。珍しいものをお持ちですね。」 「何が?」 「その紙袋は有名なジュエリーショップのものですよね。 新しい女性との出会いがありましたか?」 「そんなんじゃない。幸太郎あれから海羽は店には来ていないか?」 「来られてませんね。もしかして、あの方へのプレゼントですか?」 「ほっておけ。俺らしくないとか思ってるんだろう?」 「そんなことありません。大切な方に出会われてよかったと思って ますよ」 「俺的には全然俺らしくない。1人の女にこんなになるなんて思っても いなかった」 「会いたいという気持ちを強くお持ちだからきっと会えますよ」 「お前がいうと、会えそうな気がするよ。Thank you!幸太郎」 この店を作ったのは、俺がのんびりした時間を過ごすためだった。 バーテンを探していた時に、知り合いの店にいた今井 幸太郎(いまいこうたろう)に出会い、強く惹かれて俺の店にスカウトした。 俺より2つ年下だが、俺より落ち着いていてついグチを聞いてもらってしまう。 幸太郎目当ての女達が来たりするが、基本は1人でのんびり過ごしたい 客がやってくる。 俺の行く時間はほとんど客がいない時間だ。 だからこそ、海羽との出会いに運命を感じてしまった。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

398人が本棚に入れています
本棚に追加