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「そっちに行っても良いかな?」
彼女が頷いてみせたので、俺はひまわり畑の中に入っていった。
黄色い波に、飲み込まれるような感覚。
そこに凛として立つ彼女の存在が、非日常を感じさせた。
彼女に近づくほど、その感覚は強くなっていく。
しかしその違和感のようなものは、怖くはなかった。
むしろ、俺は次第に心安らいでいく気がしていた。
「ここ、何だか良いね」
俺が言うと、彼女は嬉しそうに笑う。
その笑い声が何とも可愛らしくて、俺の鼓動は早まる。
「俺、ひまわり好きなんだ」
そう言うと、更に彼女は笑みを零した。
それから俺と彼女は、取り留めもない話をしばらくした。
「俺、あっちのペンションに泊まってるんだ。また明日も会えるかな?」
「ええ。いつまでいるの?」
「一週間かな」
「……なら、大丈夫。毎日私、ここにいるわ」
嬉しそうな彼女を見て、俺も嬉しくなる。
「じゃあ、また明日」
そう言って、俺は林の方へ歩いて行った。
振り返ると、彼女が手を振ってくれていた。
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