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それから毎日、俺は彼女の元へ通った。
親に何処へ行っているのか聞かれたが、林を散策していると嘘を吐いた。
何故か分からないが、彼女の事は言わない方が良い気がした。
一週間はあっという間だった。
「もうすぐ、帰らなきゃなんだ」
俺がそう言うと、いつも笑顔の彼女の顔が初めて曇った。
「そう」
俯く彼女の手を、俺はそっと握った。
「来年も来るから」
俺の言葉に、彼女は決心したように顔を上げた。
「来年、私はいない。このひまわりが枯れたら、私は消えるの。だから、来年は別の私がここにいるわ」
俺は息を呑む。
彼女の言葉は荒唐無稽だったが、嘘を言っているようには見えない。
そういえば、彼女は会う時必ずひまわり畑から出る事はなかった。
「だから、ね?今、このひと時だけ」
彼女はそう言って、手を握り返してきた。
俺はその手のぬくもりを、いとおしく思った。
俺たちはしっかり手を握り寄り添いながら、眩しげに太陽を見上げた。
ひまわりが、いつも太陽を見上げているように。
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