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「君だよ、下北君」
神木は、ひょうひょうと歩く。
そして、狼男になっている下北のその目の前に立ち、笑顔になった。
「僕を殺すかい?」
神木のその行動は、とても不可思議なものであっただろう。
狼男の下北の攻撃がもろに届く距離に自ら入ったのだ。
それは、狼男となった下北の攻撃などとるに足らないと言わんばかりの行動だ。
「お前、舐めてるのか?」
下北の猛々しい目は血走っている。
「舐めてないとも」
神木がそう口にするやいなや、下北は神木に襲いかかった。
その大きな口で、神木の方に飛びかかったのだ。
下北からすれば、神木の行動にはさぞ神経を逆撫されたであろう。
下北のその口が神木の肩に喰らいついた。
神木が喰われる。
そう感じた時だった。
下北はその動きをピタリと止めていた。
下北は、本来であれば粉々にできるはずの神木の肩を、噛み砕くことはしなかった。
「離れてくれ」
神木のその言葉に下北は従い、素直に離れた。
そして、下北はそのまま立ち尽くしていた。
まるで意志のない植物のように、ただただその場で立ち尽くしていた。
「なにをやったの?」
神木は私の質問に答えなかった代わりに、私と杏奈ちゃんと下北以外のゲーム参加者の方を指差した。
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