おまけ代わり - 時代の狭間の物語

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おまけ代わり - 時代の狭間の物語

この作品はその昔、自分に書くだけの力量がなく中途半端にほっぼり出していたものの書き直しになる。 古代エジプトものの創作物、といえば、ほとんどが「新王国時代」、それも第18~19王朝の、最盛期に集中している。けれど本当は、古代エジプトの時代は約3,000年ある。ピラミッドがまだ建っていない時代もあれば、異国人の流入に苦労していた頃もあるし、壮麗なテーベの街も大神殿が建つまではちょっと大きい程度の田舎町。そのテーベも海運が重要視される時代には見捨てられ、首都機能は下流の街へと移っていく。 物語の舞台は、3,000年の中でも古代エジプト王国がローマに完全に滅ぼされる約500年前の、末期王朝時代に当たる。ペルシャ支配の始まった斜陽の時代だ。王国はギリシャ人傭兵を多く雇い、そのために軍事費が国庫を圧迫しするようになっていた。異国人の流入や価値観の変化によって、かつての神々の多くは権威が地に落ち、信仰を失っていく。 誰も書かない時代なので書いてみたかった。 それと、歴史の片隅で生きている一般人がどう生きて、どう感じていたのかを書きながら考えてみたかった。 おそらく多くの村人たちにとっては本当に、誰が王だろうと、近所に異国人が増えようと、どうでも良かったのだと思う。大事なのはただ、自分たちの暮らしを守ることだけだ。それは、無関心なのでも、無知だからでもない。「どうしようもないことだから」なのだと思う。一人のちっぽけな人間や、一介の小さな守り神には、時代の奔流に抗うことなど出来ないのだから。 何か劇的なことが起きるわけでもなく、歴史に介入するわけでもない地味な物語ではあるが、資料を通して自分に見えたこの時代の空気が、物語という形を通して、ほんの少しでも伝われば嬉しい。
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