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あの追い払われた蛾らしきモノが裸電球に戻ってきた。旋回を繰り返し、何かの拍子で熱にやられてゆらゆらと堕ちてきた。
「蝿だ」
ガクは言う。
皿の上に残ったケチャップに堕ちてドロドロになったのは蝿だった。ミノリは不気味そうに蝿を見ている。
「死んだの」
「そうじゃないかな。」
「やだなぁ。ママの彼氏を思い出す」
ガクはミノリを見た。
ミノリは頬杖をついてテーブルの空いたスペースをぼんやり見つめている。さっきまで店員に文句を言っていた女とは思えなかった。
「ママの彼氏が、火曜日と土曜日に仕事があるの。終わってからママのところに来るんだけど、やけに蝿が飛んでるのよ」
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