2人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
「かからなかったのは奇跡だ。
俺は去年もこうして飲み歩いたんだ」
「きっと菌を持ち帰って、人にうつしたのよ。周りでうつった人はいた?」
茶化すようにミノリは言う。
足元はおぼつかず、寄りかかっては離れていく。
ステーキは残しても、酒は飲み干していた。
「覚えてないなぁ。とにかく味気のない二年だったろう…」
もうミノリは半分夢の中にいる。重い瞼は頑張っても上がらない。
「なんだかぐるぐるしてる」
ミノリは立ち止まって、とうとうしゃがみこんだ。
「あと少しだ」
ミノリの脇に手を入れて抱き起こす。蒼くなった顔は、写真の男に似ている。結局ミノリは膝を曲げて歩けなくなり、ガクは背負って帰ることにした。
最初のコメントを投稿しよう!