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「かからなかったのは奇跡だ。 俺は去年もこうして飲み歩いたんだ」 「きっと菌を持ち帰って、人にうつしたのよ。周りでうつった人はいた?」 茶化すようにミノリは言う。 足元はおぼつかず、寄りかかっては離れていく。 ステーキは残しても、酒は飲み干していた。 「覚えてないなぁ。とにかく味気のない二年だったろう…」 もうミノリは半分夢の中にいる。重い瞼は頑張っても上がらない。 「なんだかぐるぐるしてる」 ミノリは立ち止まって、とうとうしゃがみこんだ。 「あと少しだ」 ミノリの脇に手を入れて抱き起こす。蒼くなった顔は、写真の男に似ている。結局ミノリは膝を曲げて歩けなくなり、ガクは背負って帰ることにした。
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