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何かの羽音が裸電球の周りで響いている。 あれは蛾なのだろうか。 ここ一体は、夏の終わりに近づくと数十匹の蛾が群れをなして現れるときく。 しかし蛾にしては小さい。 肌色の光の中に目を細めても、確かな存在は見えなかった。 「なあに。なにかいるの」 隣に腰かけ、ステーキの1片にフォークを突き刺していたミノリが同じように見上げる。 「やだあ。蛾じゃない。」 ミノリは立ち上がり、キッチンの方にいる店員に何か言っている。そのあとすぐに店員は悪びれる様子もなく、ミノリと対面した。 やがて裸電球の周りにいる"モノ"を手で払っていった。
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