お客様/その1

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お客様/その1

「いらっしゃいませ~。あいたっ!」  カランカランとドアベルが鳴ったので、愛想よく接客の基本である挨拶を口にしただけで営業終了。私の客としてやって来る8割は、こんな感じである。  ーー額直撃は初めてやけどな。  投げ込まれたモノを拾って見ると、またまたどうして。投げ捨てるように置いていかれたのか、不思議に思ってしまうぐらい立派なものだった。 「もったいないな~、もぉ~」  磨けばきっと輝く原石。それに気付く人が周りにいなかったのか、それともーー  カランカラン  人気店と言う訳ではないにしろ、私の店にはひっきり無しに客が来る。  ーーこれは後で磨いておこう。  投げ込まれたモノを大切にポケットの中にしまうと、珍しく店内まで入ってきた客を見た。キョロキョロと辺りを見渡し、不審極まりないのだが……。
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