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お客様/その2
「買取りですか?」
「ひっ!」
声をかけると、人を化け物扱いするような怯えた様子で私を見るお客様。
ーーこれはいけない。
面倒臭いタイプやーー
話が拗れる前に忠告……いや、今すぐ追い出そう。時間の無駄だ。
それでも営業スマイルは忘れずに、震えるお客様に向かって言ってやる。
「捨てる意思もない人が来るとこじゃありませんよ。迷子ですね?」
でも客は、持ってきたモノをがっしり抱き締めて首を横に振った。
ーーアカン、矛盾してるわ。
持ってるものは、素晴らしいもので。
思わず<見せてください!>と言いたくなる代物だけど……。このお客様は、そのモノの価値を知っている。
「お引き取りください」
私は毅然とした態度で言い切ると、そのお客様を店から追い出した。いくら買い取るといっても、手離したくないものを買い取ったら夢見が悪い。
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