お客様/その3

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お客様/その3

「今日もまともな客は来ないのか」  そう溜め息を吐いたのもつかの間、再びドアベルが鳴って振り替えってみれば、強い意思を瞳に宿したお客様が入店してきた。 「買取りをお願いします」 「二度と同じものは手に入らないと思いますよ?」 「それでも構いません。今手元にあっては困るんです」 「何があったんですか?」 「生活環境が変わりました。この世界を形にする時間がないんです」 「休憩時間や移動時間があるでしょ?」 「それでは頭を休ませる時間がなくなります」 「睡眠を削るとか?」 「さすがにこれ以上は死にます」 「では仕方ないですね」  私は、お客様が持ってきたモノを受けとるとそれに似合った対価を差し出した。 「生かすも殺すも貴方次第です。辛くなったら、またお越しくださいませ」 「ありがとうございます」  お客様は、その対価を握りしめて店を出ていった。あんな清々しい客も珍しいもんだが、その理由は買取ったモノを見て直ぐに分かった。  ーーあのお客様は諦めて、      この店に訪れた訳ではないーー  
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