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一つの命
俺には一つだけ他にはないものを持っている。
それは、1日だけ5分間時を止めることが出来るのだ。
これは、他から見れば凄いことだと思うかもしれない。
だけど、5分間時を止めても、使い道がないと意味がない。
だから、俺はこの能力を、あまり使ったことがない。
じゃあ、何に使うって?
強盗や、犯罪に使う者だっているかもしれない。
だけど、俺はそんなことはしたくない。
じゃあ、何に使えるか。
俺がこの能力を持つ前、ある日、トラックに引かれそうな老人を、助けることが出来ず、死なせてしまったことがある。
あの時、俺が犠牲になっていれば、老人は助かったかもしれない。
だけど、それは怖くて出来なかった。
もっと俺に勇気があれば、一つの命を助けることが出来たのに。
そう後悔しても時は巻き戻らない。
正直、他人の命なんてどうでもいいと思っていた。
だけど、一つの命がこの世から消えたことは、それは他人だから関係ないように見えるが、その家族にとってはかなり痛い思いをしただろう。
他人の命なんてどうでもいい?
そんな腐った思いは今すぐ消したい。
俺はある時、トラックに引かれそうな猫を見た。
猫は人じゃないからどうでもいいと思っていた俺は、何故かその瞬間自然と体が動き、時間を止めた。
そして、猫を安全な場所に避難させた。
俺は、一つの命を守ったのだ。
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