三.

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三.

「さてさて、こうして定められた『時間』という概念ですが、せっかく定めてもそれを目で見て測れなければ正確に簡潔には伝わりませんよね。 『あと五分で行く』なんて連絡をしても、相手が『分』を知らなかった場合、『えぇと、一日を昼と夜に二等分して、それぞれを十二等分して、その一つを六十等分したものが分で、それが五個で五分だよ』なんて説明してもさっぱり見えてこないし、言ってる間に五分経ってしまいますよね。 そこで必要になるのが、そう、『時計』というわけです」 「あぁ……はい」 「時計の歴史も時間の歴史と同様、まずは一日を測る日時計から始まりました。 簡単なものです。 地面に棒を立てるだけで良いのですから。 そこにやがて時、分、秒の概念が加わり、棒を中心とした円を描き円を二十四等分する線を加えれば、これでもう充分に時計の完成です。 分や秒までも知りたいのならば、円の直系を大きくすればなんとかその線も書き込めそうですよね。 しかし人間は一箇所にじっと暮らしているわけではありませんし、時間というのはむしろ出た先で知る必要性に迫られることも多いですよね。 つまり、どうにかしてこの時計を持ち運びたいという需要が生じるわけです」 「でしょうねぇ」
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