五.

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五.

「さて、ゼンマイはかなり最近まで主流だったわけですが、ここに水晶というものが登場致します。 水晶を用いた時計はクォーツ時計と呼ばれておりまして、これには電源が必要となるため、電池の進歩と共に成立した、現代科学的製品と言えるでしょう。 水晶は交流電圧をかけると一定周期で振動するという性質があります。これは電圧が一定である限りほぼ完全に一定周期を保つため、まさしく時計の針を刻むのに相応しい素材だったというわけです。 占いで手をかざすだけが水晶じゃないんですよ。 さらに物理学の進歩は、放射性元素であるセシウムなどが持つ物理的で極めて普遍的な現象を応用した原子時計なるものを生み出しました。 これまで『一秒』は地球の自転を元にした『一日』を割って算出されたものでしたが、そもそも地球の自転による一周は一定ではありません。 天文学的事由によって僅かなズレが常に生じているのです。 つまりこれまでの一秒は実は曖昧なものだったということになります。 そこで原子時計を用いて一秒を定義し直すことになり、現在ではもはや人類の科学技術によって得られた『一秒』を基準に時間は測られ、地球の自転による一日の長さのズレは時折『(うるう)秒』という一秒を足すことで修正されているのです。 あ、ちなみに(うるう)年の一日は、地球の公転周期で同様のズレが生じているのを、四年に一度一日足して修正しているのですよ」 「はぁ……時計なんかで宇宙にまで話が行くもんですねぇ……」
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