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十三.
憎々しげにクヌギを睨んでいると、突然そのクヌギに何かが衝突し、クヌギを支点に反転してめきめきと枝を折り倒しながら庭の方へ、セイタの方へ向かって流れ込んできた。
「セイタ!!避けろ!!」
「な、何!?なんだよ!?なんでこんな所に船が来てるんだよ!!避けれるわけ無いだろ!?来ないで!!いやだ!!う……ぅわあぁあぁあぁあっ!!」
遥か港から流れてきたと思われる一艘の小型の釣り船が真っ直ぐにセイタに向かって行く。
「くそ!セイタ!!」
ライが叫ぶが、船は水面を浮き沈みしながら怯えた絶叫を上げているセイタの目の前に迫り、しかしながら舳先が僅かに逸れ、セイタは船体に顔を擦られながらもかろうじて衝突を免れる。
「だ……大丈夫……!なんとか避け……がぼっ……ぐ……」
振り返ってライに向かって必死の泣き笑いを浮かべたセイタの体が突然水中へと消えた。
「セイタ!?セイタ!!なんだよ!?どうなってんだよ!!」
必死に呼び掛け続けていると、流れ去って行く小舟の後部から一瞬セイタのくぐもった声が届き、振り向いた先には、斜めに傾いた船のスクリューに鎖が引っ掛かり、恐らくはその勢いで鎖を繋いでいた杭が抜けたのであろう、セイタが船と共に流されていくのが目に入った。
しかしセイタは拘束から解放されたというわけではなかった。
杭が抜けた際の衝撃で首を折られたのか、スクリューに磔にされているかのような姿で、だらりと力が抜け、虚ろな目を遠くに向けていた。
「セイタ!!目を覚ませ!!今なら逃げられんぞ!!セイタ!!起きろ!!セイタ!!」
ライの必死の叫び声にもセイタはぴくりとも反応せず、船と共に押し流され視界から消えた。
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