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「あーあ、ダメか……」
走り始めた電車を駅の外から眺めながら、翔真はそう呟いた。
今頃あの電車の中では若き日の翔真が痴漢扱いされ、取り押さえられている事だろう。
自分の状態が何一つ変わっていない事からも、最悪の展開になった事は間違いなかった。
どういう理屈かは分からない。
だが、翔真の人生が大きく狂ったこの日、過去と未来の自分はなぜか出会っていた。
それが分かっていたから、変えようとしたのだ。
アパートのドアを何度もノックしたが、反応は無かった。
注意を促すためにメモを書こうとしたが、慌てるな、まで書いたところで拾ったペンは書けなくなってしまった。
もう若くない体に鞭を打って、精一杯やったのだ。
報われなさに、翔真は思わず一つため息を吐いた。
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