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第一章 お言わずの島
相談したい事件があるからと、相馬に呼び出されて部屋に入ると、大画面に見知らぬ島の映像が流れていた。
「……、……」
それは、見た事のない島で、紺碧の海に囲まれている。しかし海の色も千差万別で様々あるが、ひとつ分かる事は、生まれた国の海の色は見分けられる事だ。この島は、ここからそう遠く離れている島ではない。この色は、俺の知っている海だ。
「この島で事件ですか?……」
「まあ、そうだ」
島は小さなもので、中央部が山になっていた。その山には神社があり、鳥居から抜けるように広がる空が、真っ青だった。階段の両脇には白い旗が大量に並び、パタパタと風に流され、海よりも透明な空に音を響かせる。旗には文字が書かれていて、達筆過ぎて読めないが、漢字のようだ。
生い茂る草さえも、透明なほどに緑色をしていて、何故、透明と感じるのか考えてみると、その色の美しさだと分かった。人のいない静寂さと、自然の美しさで、眩暈がしてきそうだ。
「俺と相容れない世界のような……」
「いや、むしろ、夏目が大量発生していそうな島だと思うが……」
どこを、どう解釈すると、俺が大量発生するのだろう。
島は、何かの祭りをしている雰囲気なのだが、人の姿はなく、風に煽られている旗の音しかなかった。事件があったと聞くと、その静けささえも、不気味に感じてくる。
「色々とあって……何が起こったのか、さっぱり分からない」
相馬も島の映像は入手したのだが、その入手元の青年が行方不明になったらしい。
「ここに行って来いという事ですか?」
「そうなるかな……」
相馬は唸りながら、俺に資料を渡してくれた。
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