第二章 お言わずの島 ニ

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 秋鹿の茶菓子が気に入ったのか、次第に女性達は饒舌になっていった。 「あの島は、神喰島と言って、男しか行けないのよ。それもね……行った時の事を、口外してはいけない決まり。長年、夫婦をしていても、神事の事は何も知らないのよね……」   女性は、時子と名乗り、嫁に来てから三十年も、ここで島を見ていると言っていた。 「神事ですか……」 「あの島をリゾート地にしようって話があってもね、地元の男達が大反対するわけよ……でもね、事情を聞いても、誰も教えてくれない」  時子が弾丸のように喋っていて、秋鹿の言葉を聞いていなかった。 「それどころか、女が島の名を呼ぶだけで、不浄だとか、差別発言をする!」 「そうそう。ウチの亭主も同じ!」 「こっちもそうよ」  ここの神事は、時子の話によると、準備に一年、島で三日間のスケジュールで行われるらしい。その三日間は、親が死んでも呼んではいけないとされ、男達は島から帰って来ない。 「一年、神事に選ばれた男は禊をするわけよ。週に一回、野島山神社で断食、普通の日でも一年、肉を食べない。月に一回は、野島山のお滝様で水に打たれる」  どうも、願を掛けて行うものらしく、立候補も受け付けるらしい。だが、その相談も、女性達にはないらしい。
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