第二章 お言わずの島 ニ

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「毎日の食事を作っているのは、私達、女性なわけよ……それを、男だけで決めるなんてね……」  だが、時子の亭主は子供が授かるように願を掛け、それは神事の翌年に叶った。 「強い意志というの……それが宿れば、達成できるというものみたいでね。息子も高校一年の時に神事に行った」  そして、翌年に長男は野球部のレギュラーになり、甲子園に行った。 「最近も、神事はあったのですか?」 「…………それは、教えられないのよ」  よそ者に、日時などの情報は教えないらしい。それは、昔、祭りを見学しようと、部外者が島に行き、その年は台風で甚大な被害に遭ったらしい。 「修さんは、この土地の出身で、癌が治るように願を掛けた……」  だが、三田は死んでしまった。 「神事には、失敗もあるのよね……」 「そうそう、嵐で被害もあるし、土砂崩れで死者も出した……」 「地区のお墓には、同時に亡くなったのか、同じ日が大量に刻まれているしね……」  それは、相馬が入手した祭りの様子を撮影した動画のように、口外されてしまった事柄があったのかもしれない。
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