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「そこまでです。左手は、こちらで回収し、ちゃんと神社に納めます。だから、帰っていただきたい」
男性が事務所に入ってくると、高齢な老人の手を引いていた。しかし、服装から推測して老人は男性なのだが、性別の判別が出来ない。俺は座った老人の前に座り、じっと顔を見つめた。
「お迎えかい?」
「違います」
皺が動いたが、どこから声が出ているのか分からなかった。
外は大雨になっているが、老人は濡れていないので、この建屋は自宅に繋がっているのかもしれない。
「願を叶えた人は、島に命を還さなくてはいけない。左手の意味は何でしょう……」
勝手な推測であったが、外れてもいなかったようだ。
「右手は仕事、左手は家族……」
頭は未来で、子島に託す。右足は土地を意味し、踏んだ場所の未来を予言するもののようだ。だが、大雑把な決まりで、様々な話を作り出す。
「では、左手を託された俺は、修叔父さんの家族を託された」
「修さんは長男で、老いた両親がいる。でも、美鶴さんは嫁に行ってしまったので、後継ぎがいなかった」
だから、修は左手を絶対に探して欲しいと、俺に頼んでいったのだと、老人が涙を流していた。
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