公園の巨リス

　僕の住む街から電車で少しの場所には大きな公園があって、どんぐりの木にリスが住み着いている。もともとリスは人が飼っていたのだろう。以前は公園には居なかったし、野生と考えるのも難しいものがある。その場所は都会の真ん中だ。公園は東京のファッションで有名な渋谷区にある。そういえば最近のテレビで渋谷区で買い物をしていた人が行方不明になるというニュースをやっていた。女子高生から会社員の女性まで神隠しにあったように居なくなっているんだそうだ。

　今日は彼女の美緒ちゃんとデートなので渋谷区に行く。公園は原宿から渋谷に行く途中にポツンとある。僕はリスに興味がないし、美緒ちゃんもファッションのことばかり気にしているのでリスのことをすっかり忘れて原宿に向かっていた。僕は山手線に乗りながら美緒ちゃんはゴシックロリィタを買うんだろうな。とそのことばかり考えていた。

　１１時に原宿駅の前で待ち合わせをすると美緒ちゃんは先に着いていた。僕の顔を見ると頬をあげて笑う。フリルとリボンが付いた黒いブラウスに黒字にイチゴの模様が入ったスカートを穿いている。中にペチコートを付けているんだろう。スカートの裾から白いレースがチラチラ見える。僕も合わせて黒いシャツに黒いスキニーパンツを穿いて編み上げのブーツを履いてきたがこんな格好をするのはここ最近からなので正直恥ずかしい。

　僕は美緒ちゃんの前に行って「待った？」と訊いた。