恨みの力は電子を超えて現実へと干渉する

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 ある日のこと、戸井田くんが学校に来るといつも朝一番に学校に来ているはずの佐々木くんの席が空席であることに気がついた。 「あれ? 佐々木は?」と、自分の隣の席の辻くんに尋ねた。 「知らねぇ? 暴走族(ゾッキー)の集会に参加して事故って足の(ほね)折って入院だって」 中学二年生で暴走族の集会に参加するとは度し難い奴だ。出来ればこのまま無免許の罪も併せて少年院にでも行けばいいものを。戸井田くんは呆れた。 「そうそう、出てこなくていいのに。一生、鑑別所(カンカン)に放り込んどいた方が社会のためだろ」と、辻くん。 クラス皆が「ヤンキーざまぁ」と、言った感じの歓迎ムードであった。 戸井田くんもその歓迎ムードの波に乗ってケラケラと笑う。 佐々木くんの彼女の持田さんは一応彼氏が入院したということもあってか、借りてきた猫のようにシュンとしているのであった。 そこに、永江先生が入ってくる。ホームルームの議題は当然、佐々木くんのことだった。 「今朝方、佐々木の見舞いに行ってきたんだが…… バイクから投げ出されて全身包帯で集中治療室で未だに生死の境を彷徨っている」 クラス全員がざわめく。足の骨を折って入院としか情報が入ってなかったために、今頃は足にギプス固定されてノンビリと病院のベッドで寝ている程度だと思っていただけに余計にである。 「そんな訳で、一限目は俺の数学だから…… 数学の時間削ってみんなで千羽鶴を折ってやろうかと思うんだ」 佐々木くんのグループは積極的に千羽鶴を折っていた。佐々木くんのようなヤンキーは女にモテるのか、グループのメンバーは殆どが女子だ。彼女たちも近藤くんをイジメにイジメていたグループになる。 それ以外のグループは「なんであんなヤンキーのために鶴なんて折らなきゃいけないのだろうか」と、思いながら渋々と鶴を折っていた。永江先生から渡された折り紙の色が黒だった奴らに至っては折り鶴の裏側に「死ね」と小さく鉛筆で書いて呪詛を込めるぐらいであった。  その夜、衝撃的な知らせがクラスのSNSに伝達された。佐々木くんが死んだのだ。SNSに詳しいことは書いてないが峠を越えること出来なかったのだろう。 戸井田くんは「あんなヤンキーでも死ねば平等だ」として、手を合わせて佐々木くんの冥福を願った。
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