恨みの力は電子を超えて現実へと干渉する

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 持田さんの母親が障子をゆっくりと開けた。そこに息もなく横たわっていたのは一人の老婆だった。しかし、その老婆の顔、よく見れば持田さんの面影がある。戸井田くんは「持田のばーちゃんの通夜じゃないんだぞ」と考え、「え…… どういうことですか?」と、思わず呟いてしまう。 持田さんの母親が重い口を開いた。 「お婆ちゃんに見えるでしょ? でも違うの、この子は正真正銘の拓歩。昨日いきなり体調が悪いって言い出して、少し目を離したら…… 髪も真っ白になって、しわくちゃのお婆ちゃんになって、苦しくてベッドから降りただけで両足の骨が折れて…… そのまま老衰のように……」 十四歳の女の子が老衰で死ぬなんてありえない。辻くんも戸井田くんも驚きを隠せないのであった。しかし、目の前で眠る持田さんは老婆そのもの……  一晩で十四歳の少女が老婆になるなんてありえない。しかし、それがありえてしまった。 持田さんの母親が啜り泣きながら呟いた。 「こんないい子がどうして……」と。 辻くんと戸井田くんは持田さんの人となりを知っていたために、遺体の前であるにも関わらずに思わずに笑いを堪えてしまった。そして、叫びたくなった「人をイジメるような奴がいい子なわけがないだろ!」と。  これで気分を悪くした二人は一階の斎場に戻ることにした。さっさと帰ろうと辻くんが考えた瞬間、足を踏み外してそのまま池田屋の階段落ちのようにゴロゴロと転がり落ちてしまった。 「辻ぃ!」 辻くんは階段の踊り場で頭から血を流して倒れていた。両足は階段落ちの間に捻ったのか見ているだけで痛々しいぐらいにクニャりと曲がっていた。 辻くんであるが、命はとりとめたものの、頭を打った際に頚椎も同時に叩きつけ、当たりどころが悪かったのか首から下が動かない状態になってしまった。
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