恨みの力は電子を超えて現実へと干渉する

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 この短期間でクラスで不幸が連続して起こったことで永江先生は明らかに疲れて憔悴した様子だった。そんな中、戸井田くんは永江先生に職員室に呼び出された。 「なぁ戸井田、お前確か近藤と仲良かったよな」 「はぁ……」 「あいつをイジメていた二人、もういないだろ? だから学校に来るように言ってくれないか?」 「あ…… いや、先生がもくに……」 「はあ? なんだ?」 おそらくは自分のクラスに登校拒否がいることを校長先生あたりに叱責されたのだろう。登校拒否の生徒を学校に来させようとする理由なんてそれぐらいしかない。永江先生が「自分のクラスにイジメはありません」と言うかのように黙認していたのに、よくもまぁいけしゃあしゃあと言えたものだ。戸井田くんは永江先生のことを正真正銘の人間のクズと唾棄するのであった。 「先生も何度か説得したんだけどな。あいつも頑固でな。仲のいいお前だったら説得できるかと思って頼んだんだ」 実質、イジメの張本人みたいな奴の説得なんて聞くわけがないだろう。それともこの先生は自分がイジメを黙認していたことを悪いことだと思っていないサイコパスかなにかだろうか。戸井田くんは永江先生に底知れない恐怖を感じるのであった。 「ま、保健室登校でもいいから、頼むよ」 登校さえしていればいいのか。本当に自分の保身しか考えないクズだな。戸井田くんは永江先生の頼みを引き受ける理由など微塵もなかった。 「なぁ、学校に来させることに成功して、あいつと仲良くしてくれたら、内申点上げてやるから。アレだったら高校の推薦枠もくれてやるぞ、お前、隣町の高校希望してたよな?」 ああ、もので釣るのか。戸井田くんは永江先生を蛇蝎のように嫌いつつも、今の自分の成績では到底入ることが出来ない高校の推薦枠まで貰えるとなれば話は別。近藤くんとは親友だから説得に応じてくれるだろう。戸井田くんは永江先生の頼みを引き受けることにした。
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