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『今日は校長先生から、皆さんに重要発表があります』
スピーカーから流れる明彦の声が、少しだけ畏まる。
『今年度の模範学級の発表です。この後、正午ちょうどからお送りします。お楽しみに』
ループするシューベルトの「ます」の音声が大きくなる。
「いよいよですね、先生」
女子生徒の一人が、台本通り振り返る。
「あら、やだ」
西崎が微笑む。
「人の評価なんて、どうでもいいのよ。私は1年間、皆さんと一緒に過ごして確信しています。このクラスは良いクラスです。この学校で、いえ、世界中で、一番の学級です!」
―――それは一人の生徒が不登校を続けていてもですか?
喉元まで出かかった言葉を必死に押し殺す。
ダメだ。今爆発させたら、全てが水の泡だ。
堪えろ。堪えろ。
輝は血が滲むほど下唇を噛みながら時計を睨み上げた。
あと1分。
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