あと5分

3/6
前へ
/17ページ
次へ
ーーーーー 教師が転任してきたのは、2年前の春だった。 一見して、美人な先生だと思った。 輝は他の男子生徒がそうであったように、その若くてスリムで、利口そうな端正な顔立ちをした女性教師に目を奪われた。 彼女は細い赤縁の眼鏡をかけ、 「西崎里美です。よろしくお願いします」 と快活に自己紹介をし、優雅にお辞儀をした。 彼女は5年生の障害児クラスの副担任として雇われていたが、輝たちが6年生になるタイミングで、年配の担任教師が病に倒れると、ピンチヒッターとして6年2組の担任になった。 遠目で見ているときにはわからなかったが、彼女はパーフェクショニズム、つまりは完璧主義者だった。 教室内にはいつもゴミ一つ落ちていなかった。 花瓶に生けられている季節の花も、1輪として枯れていなかった。 その完璧ぶりに、年頃の男子たちは 「ありゃ、結婚できないな」 「処女だったりして」 と陰で笑った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加