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教師が転任してきたのは、2年前の春だった。
一見して、美人な先生だと思った。
輝は他の男子生徒がそうであったように、その若くてスリムで、利口そうな端正な顔立ちをした女性教師に目を奪われた。
彼女は細い赤縁の眼鏡をかけ、
「西崎里美です。よろしくお願いします」
と快活に自己紹介をし、優雅にお辞儀をした。
彼女は5年生の障害児クラスの副担任として雇われていたが、輝たちが6年生になるタイミングで、年配の担任教師が病に倒れると、ピンチヒッターとして6年2組の担任になった。
遠目で見ているときにはわからなかったが、彼女はパーフェクショニズム、つまりは完璧主義者だった。
教室内にはいつもゴミ一つ落ちていなかった。
花瓶に生けられている季節の花も、1輪として枯れていなかった。
その完璧ぶりに、年頃の男子たちは
「ありゃ、結婚できないな」
「処女だったりして」
と陰で笑った。
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