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「で、こんな事実を突きつけられても、お前は西崎信者なわけ?」
明彦の声に慌てて顔を上げる。
「う、うるせーよ。生徒がわかりやすいように参考書を参考にして何が悪い!」
いやらしい回想をかき消すように、大袈裟に語尾を強める。
「参考書を参考にって。駄洒落か」
明彦が手を開いて呆れる。
その動作も言い方も目つきも、隣にいる藍を意識してのことだとわかる。
ーーーかっこつけやがって。
「みんなにわかりやすい授業を研究して、この参考書に辿りついたのかもしれないし。現にその相合傘のおかげで、速さに関しての問題に強くなったしさ、あたしも」
藍が自分の席に戻りながら言う。
教師の好き嫌いに限らず、輝たちの年代は、裏では教師を呼び捨てにすることが多い。それでも藍は、どの教師にもきちんと“先生”をつけた。
そういう藍の良いところを再認識するたびに、輝は胸の奥が温かいような痛いような不思議な感覚に包まれるのだった。
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