そのペダルを漕いで跨げば

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 菜々の本当の終電時間に気がついたのは、朝方に駅前で彼女を見かけた同級生が「そういえば」と世高に確認してきたのがきっかけだった。 「お前が時々一緒にメシ食いに行ってる学部の後輩って、電車通学だよな?」 「菜々のこと?そうだよ。実家から大学に通ってる」 「朝からコンビニのバイトでもしてんの?」  世高はそれはないと思った。  菜々は学部の新歓コンパで、大学は集中して通うようにと、親からバイトを禁止されている話を自虐風に披露していた。  先輩たちは、菜々を食事に誘うと奢る羽目になり、可愛いけど付き合うには金がかかる子と冗談めかして話していた。  そんな話から、彼女は過保護な家で育っていて、終電間際まで話し込むなんて、実は望ましくないのだろうと、世高は若干後ろめたさを感じていた。  半信半疑で調べてみると、彼女が乗るべき終電の時間は0時ちょうどだった。それはいつも自転車が駅前に辿り着く頃で、間に合っていないことになる。  世高は困惑した。  ここ最近は「話が尽きないね」なんて言いながらひとしきり盛り上がり、大慌てで駅まで菜々を送ることが続いていた。  つまり、その盛り上がった分だけ彼女は終電を逃していることになる。
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