『 P 』

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〈Mother house〉という星があった。 その星は緑に覆われた、生命あふれる星だった、こともあったらしい。 いつしかその星には、戦争と内戦と疫病が増え、不条理と理不尽の星になった。 〝P〟の住む世界はもう一つの〈Mother house〉だ。〈M・h〉で 生まれ育った一部の者が移住した星。この星に新たな名を付けた者はいない。誰かは〈ゼロ〉と呼び、誰かは〈城〉と呼ぶ。 〝P〟たちの世界には〝コトノハ〟は存在しない。なくても充分なのだ。 〝P〟たちは人間ではあるが〈M・h〉の人間の姿ではない。視る、聴く、 喋ることのできる卵型の姿だ。喋りは音波だ。 〝P〟の世界には争いはない。利益を求めることもない。〈M・h〉で起きたことを繰り返してはならないと悟ったからだ。しかしなかには〈熱人種〉と呼ばれる〈M・h〉に強い憧れを抱く者もいた。彼らの姿は〈M・h〉の 人間の姿に近かったため、この星では適合できずにすぐに消滅した。 〝P〟の居る星で生きるという行為は、ただひとつ 全宇宙の一部になること。それだけだ。 そしてこの星の全ての者の名は〝P〟 〈Pulcherissimum〉〝夢のような〟という。
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