合縁奇縁

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予約してくれた個室があるフレンチレストランで、私はフォークに刺した子牛のもも肉のポアレを落としそうになった。 「戦争からは生きて帰ってきました。負傷して野戦(やせん)病院に入院している間に終戦を迎えたんです」 「そうだったんですね。ではなぜ…」 死んだんですか? そう聞くには躊躇いがあった。 でもそのまま生きていたなら既に100歳近くになっているはずだし、生まれ変わったのは間違いない。 「肺を患って、終戦から二年ほどで亡くなったんです」 私が聞きたかったことを見透かしたように彼が答える。 「肺ですか…。前世のことは全部覚えていますか?私の家族のこととか」 言いづらそうにする表情を見て、不安になる。 もしかして…
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